秘蜜の花

 一体、何が、どうして、こうなっているのか。
 ヒューベルトは上から見下ろしてくる菫色の瞳を見つめ返し、溜め息をついた。

 宮内卿ベストラ候たるヒューベルトが帝都アンヴァルに戻ってきたのは実に二節ぶりのことであった。彼は、士官学校時代の恩師や死神騎士として恐れられたイエリッツァらを伴い、旧王国領へと出向いていたのである。統一戦争の最中、王国魔道士であり、また『闇に蠢く者』の一人でもあったコルネリアをアリアンロッドにて討ち果たした。しかし、その残党がこの地にて暗躍しているとの情報が、宮内卿がフォドラ全土に張り巡らせている諜報網によってもたらされたのである。討伐自体はさしたる損害も出ず、簡単に片がついた。此度の成果を皇帝に報告した際にその場で彼女から休暇を与えられた宮内卿は、帝都の邸でも宮城内に持つ自室でもなく、皇帝の寝所にいたのである――

 豪奢な寝台の上。仰向けに転がされたヒューベルトの腹の上を跨いで、エーデルガルトは男を見下ろしていた。彼女が纏う薄手の夜着は、ほっそりとした腰、丸みを帯びた臀部といった肢体の稜線をくっきりと露わにしていた。捲れ上がった裾からはすんなりとした白い臑が覗いている。一方のヒューベルトも、いつもの黒い上着は彼女の手によってすでに剥ぎ取られ、上半身は白いシャツのみという軽装であった。エーデルガルトはシャツの釦に手を掛け、上から、一つ、二つと外していく。胸元をはだけると真剣味を帯びた眼差しは少し和らぎ、彼女はほっと息をついた。

「ですから、申し上げたでしょう。怪我などない、と」
「貴方の場合、信用ならないのよ。日頃の行いを省みなさい」

(中略)

 ヒューベルトが低く呻くのと同時に、彼女の喉奥に熱い飛沫が叩き付けられた――
 大きく息をついた彼は、主の身体を引き寄せて抱き起こした。先ほどはその手を撥ね除けたエーデルガルトも、今度は素直に男の腕の中にすっぽりと収まる。
「……飲んでしまったのですか?」

 ヒューベルトは、飲み込み切れずに主の唇の端から零れ落ちた自らの精を指で拭ってやった。そして、彼女が股の間を自身の太股に擦り付けていることに気づくと、小さく笑う。
「充分に慣らしませんと」
 エーデルガルトは不満そうに鼻を鳴らすが、一体どちらの方がより我慢を強いられているのかと問いたいくらいだ。ヒューベルトは夜着の裾から侵入を果たすと、熱く潤う泉を探り当てた。

「あっ、ああっ……、んっ――!」
 自らが零した蜜でぐっしょりと濡れた下着を引き下ろされ、そこに触れられたエーデルガルトが甘い声で啼く。
「ああ、よく濡れていますな。私のモノを咥えながら、感じておられたので?」
 秘唇のあわいに指を添えてゆるゆると刺激を与えてやると、蜜壺からまた新たに蜜が滴り、男の指にまとわりつく。耳に吹き込まれる低い声もエーデルガルトを煽るばかりである。

「ひゃ、うっ……!」
 甘い蜜を湛えた秘所に指を浸す。熱くうねるそこはあっさりと指を飲み込み、腹側のざらりとしたところを指先でぐりぐりと押されると嬌声が上がる。
「簡単に飲み込んでしまわれましたが、一本では物足りないようですな?」

 すぐさまもう一本指が増やされ、それがばらばらに動いて蜜壺を掻き回す。そればかりでなく、蜜口の上でぷっくりと膨らんだ花芽も親指の腹で捏ねくり回された。
「あっ、あっ、あっ――、イっちゃ、……うぅ……!」

 軽く達したエーデルガルトは、男の首に両腕を回して抱きついてきた。夜着越しに、柔らかな膨らみが硬い胸板に押し付けられる。
「もうっ、これ以上、はっ……。――いい?」
 頬を上気させ、情欲に溶けた瞳で熱っぽく見つめてくる彼女に、ヒューベルトもまた掠れた声で答えた。
「ええ、私もです」